工学生命体は販売致しておりません

≪ 第28話「正義の味方?」

第29話「工学生命体は販売致しておりません」

 本当ならとっくに店じまいする時間だけれど、今晩はもう少し開けておくことにしている。つい先ほどサレカさんから
「とりあえず、言われた通りに伝えておいたよ」
というメールが届いた。もしかすると今日中にも来るかもしれないと思っていたら、わずか30分後にニンバンダが店に駆けこんできて、
「イェラーさん、わたし、モック欲しいです! このお店、モック、売ってますか?」
と言った。売ってるわけないだろ、と思いつつ
「あいにく、当店ではモックは販売致しておりません」
と笑顔で答えた。
「そうですか。残念です」
 ニンバンダはがっかりして肩を落とす。

「でも、モックたちなら方位交差点の南東にある『星屑の壺』という宿で寝泊りしてるから、そこへ行って、お屋敷に遊びに来るように誘ってみたら? あの子たち、お金持ちのお屋敷は大好きよ」
 私がそう提案すると、ニンバンダはまたわかりやすいぐらいに明るい笑顔になって、
「そうします! イェラーさん、ありがとです!」
と言って、踵を返して走って店を出て行った。あんなに素直な反応されると、さすがに私も心が痛む。別に悪い子じゃないのよね …… ちょっと価値観ちがうけど。でもセア・エットを助け出すためだし、このぐらいは致し方ない …… のよね。

 私はモックたちに渡した装置と寸分違わぬものを2階の寝室の床に置いて、クルマロ君からの連絡をじっと待っていた。この装置は2つ揃っていないと意味がない。そしてこの装置の使用には莫大な電力を必要とするので、すでに丸1日かけて充電してフルパワーにしてある。今月の電気代の請求書を想像して思わず身震いする。

 右手首にはめていた腕輪が震える。
 クルマロ君の合図だわ! よし、今よ!
 私は装置の起動パネルを押した。
 ヴィーンという音とともに、輪っかの内側が青白い光で満たされる。そして ……

 光の中から妖精さんが飛び出してきた! 大成功!

「!!? イェラ!? どうなってんのー!?」
 セア・エットは自分の身に起こったことが理解できずに、目を丸くして私を見つめていた。

 ≫ 第30話「真実を伝えます」

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