自慢してください

≪ 第26話「お姉さんと呼びなさい」

第27話「自慢してください」

 サレカさんはおよそ自慢とは無縁の人物だ。
 ここ2年ほどの付き合いで、彼女の口から自慢らしき台詞を聞いたことは1度もない。
 彼女はいつも自然体で、大らかで、そばにいる人を心地良い気分にさせる。
 私はサレカさんのそういう性格が大好きなのだけど、今回1度だけ ……

「 …… 自慢しろって言われても」
 サレカさんはとても困った顔で首を傾げている。
 隣に座っているメイモアさんも怪訝な表情で私を見つめる。
 今はちょうどお昼休み。一般にも開放されている都政館の食堂で待ち合わせて、話を聞いてもらっていた。もちろん頼みごとをするのだから、お2人の食事代も支払うつもりだ。

「難しく考えないで。クルマロ君を連れて行って、こんなふうに言ってもらえればいいの。『この子は、私のところに住んでるクルマロだよ。とーってもかわいくて、抱っこするとふわふわなんだ。ニンバンダのところにモックいる? あ、いないよね。ごめんねー。ニンバンダの家にはリムシーペルがいるけど、全然なついてなくて、抱っこなんてしたら、きっとがぶりと噛まれちゃうよねー』」

 サレカさんもメイモアさんも、心の底から呆れたような顔でこちらをじっと見つめている。
「お願い! セア・エットを助けると思って!」
 私は必死に懇願する。
「それはいいけど、そんな台詞を上手く言う自信がないなあ」
 サレカさんが躊躇っていると、メイモアさんが
「やってみたら? あなた昔、劇団にいたじゃない」
 あら。初耳。
「こ、子供の頃にちょこっとやってただけだよ?」
「そんなに上手でなくていいの。ニンバンダ相手だから、持って回った言い方だとかえって通じない。少しぐらい大げさでわざとらしいほうが、自慢が伝わりやすいと思うの」
 このあとも言葉を重ねて説得し、なんとか承諾してもらった。
 このあとはモックたちと打ち合わせだ。ああ、忙しい。

 ≫ 第28話「正義の味方?」

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