お出かけしましょう

≪ 第34話「性格が合わないようです」

第35話「お出かけしましょう」

 さすがにずっと部屋に閉じ込めていると精神衛生上よくないので、私はセア・エットと一緒に遠出することにした。すでにモックたちに例の転送装置の片割れを目的の場所に運んでもらっている。あそこなら追手に見つかることもない。

「わーい、わーい! セア・エット、これからお出かけするよー! でもシェムタルはお留守番ねー。かわいそうねー」
 セア・エットは愉快そうにそんなことを言う。
 どうしてわざわざ怒らせるようなことを言うのかしら。
「おらも行くだ!」
 シェムタルはついて来たがっているけれど、そもそもこういう時に店番させるために購入したロボットだ。
「だめ。しっかり店番するのよ。品物はなるべく定価で売ってね。客が値切ろうとしても簡単に応じないように。こちらが譲るのは1割まで。時間があればお店の掃除もしてね。それから ……」
 不満そうなシェムタルに店番の心構えを話し終えてから、セア・エットと私は転送装置の青白い光を潜り抜けた。

「おおー! 本当に出て来たー!」
「すげー!」
「手品だ、手品だ!」
 潜り抜けた先にモックたちがわんさかいた。
 プット君やクルマロ君の他にも見知らぬ顔がたくさんあった。
「ここが、あなたたちの宇宙船?」
 辺りを見回すと、モックに合わせた小さな椅子とテーブルがあり、床は玩具やクレヨン、本などで散らかっていた。正面は大きな窓になっていて月面の景色が一望できる。空には大赤斑の渦巻く母星ヤブゴナが鎮座して赤黒い光を月面に注いでいた。
「てっきり頭をぶつけるかと思っていたけれど、別にそんなことなさそうね」
 私は十分な高さのある天井を見上げながらそう言った。
「もともとは人間が使ってた宇宙船だもん」
 モックの1人が答えた。
「不時着して何年経ってるの?」
「ええとね、15年ぐらいかな」
 クルマロ君が答えた。
「宇宙船はとっくに直ってるんでしょう? どうして故郷に帰らないの?」
「なんとなく。この月が気に入ってるから」
 プット君がそう答える。
「あ、そう」
 いつでもどこでも、なんとなく。
 それがモル・モックという種族なのだ。

 宇宙船は想像以上に広くて、縦も4層構造になっている。もともとは大型貨物船として使われていたもので、これなら確かにモックたちが全員乗っても十分な居住スペースが確保されるだろう。セア・エットは楽しそうにそこらじゅうを飛び回って、モックたちと追いかけっこしていた。そうして数時間ほど経ってから
「月面の洞窟のほうにも、ぼくたちの住処を造ってあるんだよ。一緒に行こうよ」
 モックたちは誘ってくれるけど、
「セア・エットも私も、真空では生きられないから」
 身体の6割以上が機械で構成されるモックとちがって、リムシーペルの身体はおよそ7割が生体組織。ずっと人間に近い存在だ。私たちと同じように極端な環境には耐えられない。

「人間サイズの気密服ならあるけど、セア・エットに合うような小さい服はないなあ」
 テン君が残念そうに言って肩を落とす。
「それよりあなたたち、いつの間にか月面に村まで造りはじめちゃって、もしかして永久にこの月に居つくつもりなの?」
「うーん。わかんない」
 モックたちに長期的展望を尋ねた私が馬鹿だった。

 ≫ 第36話「車で国都に帰りましょう」

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