ここから先は立ち入り禁止!

 ≪ 第4話「掃除と料理と、お買い物」
 不思議なお店周辺地図

第5話 ここから先は立ち入り禁止!

「いらっしゃい。あら?」
 2人のお揃いの服装を見て、私は目をぱちくり。
 若草色の短衣(チュニック)と白いマント。
 腰にはベルト、足元はダークブラウンのブーツ。
 都政館の職員が着ている制服そのまんま。
 昨年、語学講座の帰りに都政館前でお2人と待ち合わせて、おしゃべりしながら帰宅した短い日々が脳裏をよぎる。

 私はお2人がどれだけおめかししてくるのかと色々な想像を働かせていたので、正直驚きを隠せなかった。
「あ、これ? ごめんね。仕事が少し遅くなって、勤め先からそのまま立ち寄ることにしたの。家に戻って着替えるのも面倒くさいし」
 サレカさんが首を下に向けて自分の服装を見直している。
「私は1度帰って着替えましょうって言ったのに、サレカったら、強引に引っ張って来るんだもの。恥ずかしいったらないわ、もう」
 メイモアさんが顔を赤くして俯いている。
「別にいいよ。友達同士なんだから。ねえ、早くイェラのお部屋見せてよ」
 サレカさんは私の背中を押して急かせる。

 私は2人を応接間へ通した。
「へえ。ここがイェラのお部屋かあ。すごいねえ。私の部屋より断然、綺麗だよ」
 サレカさんは感心しながら部屋を見回している。
 メイモアさんは、さすがに不信な顔。
「ここは応接間。商談に使うお部屋なの」
 私は苦笑しながら説明する。
「なんだ。あ、それなら向こうがイェラの部屋だね」
 サレカさんは東の扉を開けようとする。
「だめ!」
 私は慌てて扉とサレカさんの間に割り込む。
 サレカさんは驚いてこちらをじっと見つめてくる。
「向こうには行けません。というより、何で勝手に入ろうとするの? とにかく向こうは …… そう、改装中。通行止めです。ほら、お食事も全部、そこのテーブルに揃っているでしょう」
 私がテーブルを指差しながら断言すると、サレカさんは首を傾げながら後退った。
「まあ、いいけどさ」
 彼女は肩を竦めて寝椅子に腰掛ける。

「映画みたいだね。タンツァの寝椅子。敷布もふかふか。食事のあと、こうやって寝そべったりしてもいいんだよ」
 サレカさんは遠慮なく寝そべった。
 つまらないことばかり知っているんだから。
「お食事前に寝そべることは、たいへん失礼なことなのよ」
 少しだけ意地悪く言ってみた。
 すると、メイモアさんが顔色を変えてサレカさんを引張り起こす。
 メイモアさんは少し堅いところがあるのよね。
「さあ、遠慮なくどうぞ」
 私も腰掛けて料理を勧めたけれど、彼女たちは怪訝そうに互いの顔を見交わした。その理由に私もすぐに気づいた。
 フォークとスプーンを忘れてた!
 切り分け用の大型ナイフもない!

「ごめんなさい、私ったら。ほほほ。いま取ってくるわね」
 私は口に手を当てて笑いながら食堂へ通じる扉へ向かう。
 サレカさんが首を伸ばして覗き込もうとするので、私は慎重に扉を少しだけ開け、隙間に身を潜り込ませて後ろ手にばたんと閉める。必要な物を取ると、また同じような怪げな仕草で戻ってきた。
「向こうに何かあるの?」
 サレカさんは瞳に好奇心を宿して私の顔を見つめてくる。
「なーんにも」
 私はとぼけて知らんぷり。
「ふーん」
 でも彼女は全然納得していない様子。
 こ、この子はとても危険だわ。十分に警戒しないと。

 ≫ 第6話「メイモアさんのブローチ」

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