コーヒー豆を輸入したいのです

≪ 第45話「どちらにも加担したくありません」

第46話「コーヒー豆を輸入したいのです」

 イクィタの執務室を出ると、(エレベーターは混雑していたので)階段で2階まで下りて、もう1つの用件を済ませるために流通管理部に足を運んだ。

 楕円形の広間を扉のない素通しの小部屋がぐるりと取り囲んでいる。ここも手続きに訪れた人々で大変込み合っていた。1時間ほど待たされてから、開口部から部屋に入って椅子に座り、輸入係の中年男性と向き合った。

「モサイからコーヒー豆を仕入れたいということでしたね」
 予め端末で送っておいた要望の概略に目を通しながら、男性は事務的な口調で言った。
「この用件であれば、わざわざ足を運んでもらわなくとも、端末でお手続きしていただけるのですが …… 」
 男は実に面倒くさそうな口調で言った。
「ええ。でもなんだか複雑でよくわからなくて」
と笑みを引きつらせながら答える。
「ですからねえ。それもガイドにしたがっていただければね …… まあ、いちおう基本的な手順を説明すると …… 」
 彼はそこでひと呼吸おいてから、また事務的に淡々と話し出す。

「組合の一般的なやり方では、輸入側と輸出側における2つの銀行を間に介して行われます。国都の市場にはモフトバ銀行しかないので、まずそこに信用状開設依頼と為替予約を行なってください。信用状は輸出先の銀行が、あなたに代わって輸入代金を支払ってもらうための保証状です。為替予約は為替変動リスクを回避するための措置です。つまり外貨で支払う商品代を確定しておくのです。次は都政館に行って諸々の手続きをします。輸入許可証の取得や防疫検査の日時指定など、色々な手続きが必要ですが、それはあちら側の説明にしたがってください。全ての必要書類が整ったら税関係に提出して納税申告を済ませます。船舶の事故で積荷を失うリスクを避けたいなら保険の申込みもお忘れなく。この段階では予定保険。輸出元で船積が終わると、ほぼ同時に船積通知が送られてくることになります。ここで予定保険を確定保険に切り替えてください。荷為替手形がこちらの銀行に送られてきたら到着通知が届くので、そこで手形の決済をして、船積書類と船荷証券を受け取ってください。この書類を組合の通関業者に提示して、通関作業と荷受け作業を依頼します。こうして、川沿いのコンテナ置場にあなたの欲しい物が積まれているはずです」

 …… この男の説明は死ぬほどわかりにくかった。
 ともかく、丘の上の都政館と、丘の下の市場組合館を行ったり来たりしなければならないってことだけは理解できた。なるほど。確かにイクィタの言う通りだ。この国はさっさと1つにまとまって、この煩雑な仕組みをすっきり整頓したほうがいい。

 私は腹を立てながら、係の人が渡してくれた「わかりやすい輸入手続き」という冊子を片手に、足早に組合館をあとにした。

 ≫ 第47話「真夜中の散歩」

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