町中を捜索しています

≪ 第30話「真実を伝えます」

第31話「町中を捜索しています」

「イェラーさん、妖精さんが逃げました! どこにもいません!」
 案の定、翌早朝、まだ開店前にニンバンダが慌てた様子で店に駆けこんで来た。
「え!? いなくなった? 檻から出したの?」
 ちょっと後ろめたく思いながらも、素知らぬ顔でそんなふうに答えておく。

「昨日の晩、モックたちが『こんなところに閉じ込めておくなんてかわいそうだから、せめて檻から出してあげてよ!』と何度もせがむので、部屋の扉と窓は全部閉め切ってから、ケースの扉を開けました。そしたらセア・エットは勢いよく飛び出してきて、ベッドの下の隙間に入ったです! その下を覗いてみると、居なくなっていました! とっても不思議でーす!」
 ニンバンダは早口でまくし立ててから、訳が分からないというように首を大きく横に振った。この店の2階にいるけどね、と思いつつ
「そ、それは本当に不可解ね。いったいどうしたことかしら?」
と首を捻りながら答えておく。

「ベッドの下には、モックたちが持ってきた変な輪っかがありました。もしかするとモックたちのいたずらかもしれないです!」
 当たり前だけど、ニンバンダはモックたちを疑っている。
「そんな輪っかを使って手品みたいに外に出したっていうの? それはちょっと無理じゃないかしら」
 すっとぼけた口調で答えた。
「とにかく私も召使たちも屋敷中、町中を探しているです! お父様もかんかんに怒ってます! 逃げた妖精をかくまった奴がいたら外交問題にしてやると言ってます!」
 何が外交問題だ。犯罪者のくせに。
「 …… そ、そう。私もいちおう探してみるわ」
 私は引きつった笑みを浮かべて、ニンバンダを見送った。

「セア・エット、お外に出て飛び回りたいなー」
 私の部屋にいるセア・エットは、とても退屈そうにしていた。
「まだ外は危険よ。マシュカンの手の者たちが国都中を探し回ってるから」
「はあ。セア・エットは不幸な妖精さんねー」
 セア・エットはそう言って溜息を吐いた。
 さて、どうしたものか。あの執念深いマシュカンのことだから、そう簡単に捜索を諦めはしないだろう。他所の町 …… 二都や四都にも捜索の手を伸ばしている可能性が高い。かといって、こんな小さな妖精さんをたった1羽で宇宙船に乗せて、危険な世界へ放り出すわけにもいかない。しばらくはここに留まってもらうしかなさそうだ。

 ≫ 第32話「部屋に戻りなさい!」

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