市民の怒りと組合長の娘さん

≪ 第18話「失われた夏」

第19話「市民の怒りと組合長の娘さん」

 開店後に腕輪を起動して宙にニュース番組を映し出す。1枚は市場でのイクィタ・ヴェコに対するインタビュー。もう1枚は現在の都政館の様子だ。まるで城を攻め落とそうかという勢いで、群集が館を囲んでいる。窓のカーテンは全て閉ざされ、中の様子は見えない。石どころか、鉄の棒を持った人までいる。
「都政官、出てきやがれ!」
「俺たちの夏を返せ!」
 組合の荒くれたちが拡声器で夏の権利を主張している。大きな石が1つ飛んで窓硝子に当たったけど、軽く弾かれただけだった。

 そういえば、都政館てどうしてあんな要塞みたいにごつい構えなのかしら?
 サレカさんが言っていたように、この国でも色々な歴史があったのだろうなと思う。
 今度暇があったら共和国の歴史をきちんと勉強してみよう。あくまで暇があったらだけど。

 今度はイクィタ・ヴェコへのインタビュー画面に集中する。
 確か城塞市場の組合長の娘さんだったわね。
 コビ族特有の細い金髪を肩のすぐ下まで伸ばした知的な女性だった。まだ少女と言ってもいい年頃だけど、受け答えの仕方は並の大人より落ち着いている。
「他にいくらでも手があったはずです。今回の決断の背景には他の都市との電力取引があるのです。都政館の無策が招いた財政不足を、こういう乱暴な形で穴埋めしようとしているのです。そもそも問題の本質は害虫を発生させてしまった都政館の防疫体制にあるのですから、その責任の所在を明らかにしなければ、市民は到底納得しないでしょう」
 彼女が将来のジェモサール(都政官)の地位を狙っているという噂は、もしかすると本当なのかもしれない。仮にそうだとしても、その手段が穏当なものであることを願うばかりだ。戦争とか内戦にはもう飽き飽きしている。

 はっくしょん! それにしても、もう少しましな解決策はなかったのかしらね。
 外国人の私だって寒いのは同じなんだから。 ≫ 第20話「都政館で一触即発!?」

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