共和国の5月は秋です

≪ 第38話「まだ捜すの?」

第39話「共和国の5月は秋です」

 暦は5月(アギルの月)へと移行する。外国人の私が少しだけ戸惑いを覚えるのは暦と季節の対応だ。月世界にいる限り、誰もが1年296日(閏年は297日)、9つの月からなる同じ暦を使っているけれど、月と季節の対応は国ごとに、或いは都市ごとに異なっている。

 故郷のイテススでは5月は夏の盛りだった。
 スカヴアでは初夏、ニバヒリでは春。5月の秋は珍しい。
 それに共和国にとっても、今年の秋はいつもの秋ではない。
 異形の夏の代償は、異形の秋で支払われる。
 木枯らしに晒された木々はとうに葉を落とし、身に纏う衣を持たぬ哀れな老人のように、都のあちらこちらで立ち尽くしていた。

 シェムタルに店番させて、私は自室でぼんやりと外の景色を眺めながら簡単な昼食をとっている。おしゃべりなセア・エットがいないと、やはりなんとなく寂しい。
 モックの宇宙船に転送装置の片方を置いてあるので、セア・エットは定期的に向こうに遊びに行くようになった。モックたちと遊ぶのがよほど楽しいのか、2、3日向こうに行ったきり帰ってこないこともある。電気代は月1万ミラカを覚悟しなくてはならないけれど、これもセア・エットのためだと思えば仕方ない。

 マシュカンの手下たちを町で見かけることも少なくなった。さすがに諦めたのか、あるいは別の町や月に捜索の手を広げているのかもしれない。肌寒い景色とは対照的に、町には穏やかな日常がゆっくりと戻り始めていた。

 ≫ 第40話「騒がしい鯉たち」

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